尾ひれ100%ブログ

服に7つのシミを持つ男プレゼンツ

月の爆撃機

文学部の授業は、社会からのはみ出し方をとてもわかりやすく教えてくだする。

教授という生き物は皆シューカツに唾吐いた上にケツ拭いてきた連中なので、言ってることがとっても社会的ウンコで安心する。

木曜日にとっている講義はとても面白い。

毎回なにやらカシコくなった気持ちになるが、十分な復習をしないので、結局血肉となっている気はしない。

落語を観に行っているようなものである。

私は留学に行く直前の学期にもその教授の他の講義をとっていた。

その時も真面目に受けていたのでよもや落単するはずがないと思っていたが、なぜか不可になっていたので、アイルランドで憤死した覚えがある。

心当たりといえば、出席カードに書く教授の名前を最初から最後までずっと間違えて書いていたことぐらいである。

それで落とされたとしたら、あまりに心が狭い。心狭男である。

心セマオはウディ・アレンの生命力を5倍にしたような風貌をしていてとにかくよく動くしよく喋る。喋りすぎると勢い余ってだいたい村上春樹をめちゃめちゃ馬鹿にする。

ところで私は文学者では坂口安吾が好きだ。

受験が終わった時、辞めた高校に大学合格の報告をして教員全員の存在価値を全否定してやろうと出向いた時に、副校長からもらった安吾の随筆集が最初の出会いであった。

ぼくは知恵遅れなために当時読んでみても何言ってるか全然わからなかったので2ページぐらい読んで後はずっと「MAJOR」が全巻入っている本棚の隙間を埋めるのに使っていたのだが、大学2年になって演習の題材にこの安吾が出てきたことを機に、改めて読んでみると、すっかり心酔してしまったのだった。

これを境にぼくは人が変わったように、フライパンを洗わなくなり、根暗を極める性格のくせに闇雲に海外留学をするなどという無謀なことを企てたりしだしたのだった。

留学にもこの本は持っていって、指標としていた。ちなみに一緒に留学に来たイジリーくんは「嫌われる勇気」を持ってきていた。

インスタグラマーでイケイケなイジリーくんも大変なんだなあと思った。

前回の授業でセマオは坂口安吾のエッセイの一つである「文学のふるさと」に触れた。

文学のふるさと」は2年の研究発表の時、どうしてもうまく解釈できなくて4万時間苦闘したことを思い出した。

でも今は、そのふるさとは帰るべきところではなくて、出発するところなんだということもよくわかるようになっていた。

そう、おれにとって実家は帰るべきところではなく、充実の筋トレマシーンがあるところでしかないのであった。