夜長姫と耳男
「夜長姫と耳男」とは、坂口安吾の短編小説である。
孤独と銀杏BOYZと坂口安吾が重なり合った時間があった。大学2年生の頃だ。
それはもう陰鬱極まりない毎日で、ひとり酒を飲み煙草を喫い散らかし、キッチンの灰皿が毛利探偵事務所のそれになるまで音楽と文学と哲学と映画だけに浸かっていた。
もともと異常な倫理観があの時により捻くれてしまったことは否めない。
陰鬱が突き抜けて海外逃亡したことは何度も話した通りである。
銀杏BOYZをきちんと聴くと、今でもあの時の気持ちを思い出す大隈講堂。
論文を書くために何度も読んだ夜長姫と耳男の小説世界。
二十三日、おれは婚約までした女性と別れた。
受け入れ難い現実と共に、ただ時間が過ぎるのを感じている。
タイミングを合わせたかのように仕事が忙しくなり、およそ2倍の労働時間を働いているのもあって深く考えられていない。
婚約者と別れるということは、飼い犬のいちくん共々失うということである。
これら2つは、最近のおおよそおれのすべてであり、他の何で埋めればよいのか全くわからん。
今は仕事が埋めている。
しかし、金曜日の夜、アレクサは終業時間になると爆弾ジョニーの「唯一人」を流してくれる。はじけとぶ華金の合図として設定している。
それが今では虚しいばかり。
楽しいことをしようとしても、常にn-1の状態で、必ずプラスになることはないという仕組みだ。
詐欺である。人生の詐欺。どんなに頑張っても、必ずn-1されてつらい→楽しいに転じることはない。
おれの1はどこいった?楽しさ1はどこだ。
金曜日の夜が、いろはに千鳥が、スプラトゥーンが生み出す1も、生まれようかとすればしたそばから全てどこかに霧散してしまう。
おれは今日誕生日ではないか。
ハッピーバースデー25歳のおれ。