尾ひれ100%ブログ

服に7つのシミを持つ男プレゼンツ

送別考

Sくんが転校する時、おれは泣いたような気がする。
同じバス組として苦楽を共にした色黒の助平男との別れは、当時小学何年生かのおれにとって辛いものであった。
しかし、それぎり、彼とは一度会ったのみと記憶している。
転校先の長野までバス組のみんなで会いにゆき、特急列車におれだけ取り残されかけて、みんなが懸命に列車を止めてくれたという友情のSTORYを覚えている。
ただ、Sくんに関する記憶はほとんどない。
よく泣いては鼻を啜っていた。唇を極度に舐める癖があったような、なかったような。
というのも、彼の転校とほとんど入れ替わりにしてやってきたAくんという色黒の助平男に記憶のほとんどを塗りつぶされてしまったからだ。
第二の色黒の助平男ととは、中学一年生で同じクラスになり、その一年間だけわりと仲良くし、その後ほぼ関わりはない。
「戦艦大興奮勃起丸」としばしば口ずさんでいたのを覚えている。
中学2年でクラスが違ったその瞬間が、彼との別れの節だったのだろう。
このようにして、人と人との関わりは明瞭な別れもあれば、さり気ない別れもある。
最初の助平を送別する時は悲しんだが、次の助平との別れの時は結果的に悲しまなかったということになる。
だが、今にしてみれば、どちらの助平もまた、さして相違はない。
人間の涙なんぞ、大したものではない。

昨日、また一人の親しき友人と別れた。
とはいっても今生の別というようなものではなく、一年間留学に発つだけなのだが。
名をタケゾウと言う。
昨日の送別会の前に行われた麻雀で、タケゾウは3000円負けて中国へ旅立っていった。
かなしきかなタケゾウ。

(以下略)