尾ひれ100%ブログ

服に7つのシミを持つ男プレゼンツ

アイスランド 3日目 ガンダーラ編




アイスランドも早3日目。

しっかり腹にものを入れておかないと全然元気が出ないことがわかったので、ホステルで朝食を頂く。1000円ぐらいだった。

中国人らしき給仕のおばちゃんにニーハオ!と愛想よく挨拶されたので、おれもニーハオ!と返す。

チェックアウトのためにフロントに行くと、昨日非情にもおれを置き去りにした例のイギリス人の兄ちゃんがいた。
心配していたようなので、違うツアーで同じところを観光できたことを伝えた。ちゃんと伝わっていたかは若干定かではない。




今回のツアーは、ガンダーラを目指して南海岸線沿いを東に二日間かけて旅する。料金もお高い。


これに参加できなかったら丸二日とばくだいな金を棒に振るので、絶対にお迎えを逃さぬよう予定の10分前から瞬き一つせずにスタンバっていた。

バンがすぐにやってきて乗ることができた。待ち合わせが成立することをこれほど歓んだのは初めてであった。

代わりに一緒に待っていた、陽気なアメリカ人らしきコペッチみたいな長身の男前は違う会社だったようで、乗車は断られていた。あの瞬間は不安を煽るので実に嫌である。
強く待たれよ、そして早めに電話をせよ。


乗車客はおれが一番乗り。続いて日本人の母娘、次に中国人夫婦、中国人のかしまし四人娘、中国人の女一人旅、最後にアメリカ人夫婦。

アイスランドという西の果てで脅威のアジア人率。アベンジャーズがこの人種構成だったら絶対にヒットしなかったであろう。
これがグローバル化の影響か。


全員を乗せたバンは一旦ツアー会社の本拠地へ。なにやらもたもたする職員ら。
「この車に異常が見つかったので車を替える」とのこと。

「おいおい、冗談じゃね~よ」アイスランドの荒野で車がエンストし、吹雪の中延々と助けを待つビジョンが脳裏を掠めた。

暖房の効いていない車に乗り換えて出発。不安である。



最初に行ったのはセリャラントスフォスの滝。また滝か!

なんでも、滝の裏側に行くことができるのがスゴイという。フルーツ公園の滝だって裏側に行けるではないか。
スケールは違えどコンセプトの既視感は否めなかった。

夏に行くとこのように美しい景色が見られるという。


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ほんとかよ!?CGじゃねえのかこれ!?


実際におれが見た滝の裏側はこれ。

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しぶきがすごい。先に良い写真を載せてしまったので実際の写真が霞むことこの上ない。

ここへ辿り着くまでにびしょ濡れの岩肌を伝って来なければならないので、落ちそうで怖かった。落ちたら間違いなくそうとう寒い。

ツアーによっては冬の期間滝の裏側に行くことはできないらしいが、我々のガイドは先陣切って一目散に滝の裏側へ突入していったので、健脚に自信のある者らは彼に続いた。

裏側に来たのはおれと中国人の夫婦であった。うち御夫人は裏側のなかでも岩肌が露出していて足元が不安定な所までガンガン進んでいってしまい、おじさんは必死に呼び戻していた。

このおじさん、温水洋一のような顔をしていたが、英語が喋れるばかりでなく日本の大学で勉強していたこともあったらしく、日本語も堪能であった。

非常にアクティブ・ひょうきんな性格で、途中下車の度に誰よりも興奮して写真を撮り、カンフーの型を奥さんに放ち、道中ではかしまし四人娘の通訳をし、たまにイカの干物を食べて車内を悪臭で包んだ。


一応記念に撮る。

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図らずも頭に滝を受ける修行僧の図となった。




次はSkógafoss、「雑木林の滝」である。また滝かよ!もう滝はいいよ!

今回の滝がスゴイのは、ここがかつて海に面した崖だったということである。
つまり、現在滝となっている絶壁がそのまま海岸、その下は海底であったということだ。はえ~すっごい。しかし滝は滝である。

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滝壺のあたりまでびしょぬれになりながら行ってみた後、写真右の丘を登った。


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道中半袖半ズボンの太っちょなアメリカ人がいた。寒くないの?と訊くと「どういうわけか寒くないぜ!」と言っていた。大した男だと思った。

頂上からは海が見える。

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滝を見下ろす。

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集合時間に余裕がないので、スッサスッサ登ってスッサスッサ降りた。

帰り道では未だ中腹ぐらいでヒイヒイ言っている半袖短パンの男とすれ違った。頑張って~


半分ぐらいの人が時間通りには帰ってこなかった。少人数のツアー故の緩さである。
しかしおれは思う。迷惑をかける人が少数なら遅れても良いのか?否、協調の母体に大きいも小さいもない。
遅刻するならば、たとえ100人の大型ツアーであろうとも堂々と遅刻すべきである。

おれは中学の頃の林間学校で、大富豪に夢中になるあまり集合時間に遅刻し、めちゃめちゃ怒られたことがあるのを思い出したりしていた。嫌な思い出である。だいたい、集合時間を忘れている人間がいるのに気づいたら、呼びに来ればいいじゃないか。何も全員で待ち続けてプレッシャーを与えた上で怒ることはない。ブツブツ

杉山氏は多難な学生生活を送ったタイプのようであった。

日本人のお母さんがトイレから急いで帰って来る際に、凍った池の上を知らずに走り抜けるという要らないエンターテイメントを提供し、一同騒然となったりした。

日本人の母娘らは、娘さんが来年度から就職ということで冬休みを利用して旅行に来ているとのことであった。

留学に来たもののレポートをサボり、親の金を無心してアイスランドなどへ亡命しているおれとは大違いの孝行娘である。



次はガイド(運転手)の計らいで、予定にはなかったが馬のいる牧場に停車。

馬は昨日のゴールデンサークルツアーの途中でもふれあう機会があったので、おれは敢えて降りることはなかった。そういえば書き忘れた。

女性陣と温水洋一は大はしゃぎであった。

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アイスランドの馬はロン毛で足が短くがっしりしていた。



次に訪れたのは、Reynisfjaraのブラックサンドビーチ。

海岸沿いの陸地が溶岩石で形成されるために、砂浜も黒色をしている景色がスゴイ。

このあたりは波が大きく、万一さらわれた場合は死ぬから気を付けろと再三注意された。
そう、自然をナメた者はいつでも死ぬのである。海が大好きな大学生諸君は是非訪れて波にさらわれてほしい。

この時は猛烈に吹雪いており、黒い砂浜に白い雪が映えていた。

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完全な白黒の世界。この世の終わりか。

砂粒の大きさは普通の砂浜より少し大きいぐらいだったが、それでもやはり歩きにくいことこの上なかった。


併設されたレストランで昼食をとる行程になっていたが、高いお金を払うのが馬鹿らしい食べ物しかなかったので、霞みを食べて我慢した。


ビーチを発ち、ひと眠りしている間に車窓は一変して真っ暗になっていた。

かといって完全に日が暮れているわけではなく、厚い雲が空を覆うあまり、日光がまったく届いていない状態のようであった。

どことも知れないところで降ろされる。

一面に広がる溶岩を雪が覆っていた。
このあたりは一帯は溶岩地帯になっているらしかった。

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この写真、撮りそこないではない。明度を上げればうっすらと景色が見えるはずである。
これほど真っ暗ではなかったが、光がほとんどないためこのように写るのだ。

初めて体験する妙な暗さと雪を被った溶岩地帯が音を吸って完全な静寂が宿り、何やら恐怖感を煽る異様な光景であった。


その後は完全に日が暮れ、街灯もない暗闇を小さなバンで今夜泊まる宿を目指した。

時間が押しているらしく、やたらスピードを出すのでおっかなかった。
ガイドさんは運転手が兼任しており、しゃべりながら運転するので、狭い橋を通る時などは尚更であった。

夜20時半頃であっただろうか、やっと宿に着く。
空腹のあまり幻覚が見えだしていた。やはりアイスランドで飯を抜くものではない。


ホテルの入口では犬がお出迎え。写真はない。

一人旅の中国人女性の荷物が重そうだったのでお持ちする。紳士である。

聞くと彼女は一か月ほどかけてヨーロッパを旅するという。今はまだ序盤らしかったが、序盤にアイスランドに来たら疲れっちまうと思うのだが、どうだろう。

部屋に荷物を置いてやっと夕食となる。

温水おじさんがアイスランド語で「乾杯」したがった。ドリャー!みたいな感じ、なんだったか忘れた。
旅をしては世界各地で「乾杯」しているらしく、非常にネイティブな日本語の乾杯も交わしてくれた。

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かしまし四人娘や御夫人の肘をついて飯を食う、そして半分以上残すなどの様を見て、これが文化の違いかと思ったが、一人旅の彼女は品行方正であり、やはり個々の人間性と国民性はまったくの別物であることを実感した。

以後彼女とは一人旅同士、会話をする機会が多かったが、愛嬌良く若そうに振る舞いながらもなかなか年がいってそうであった。

会話をする機会が多かった、などと書くと、いかにもおれがインターナショナルに英語を駆使して様々な国籍の人と交流をしてきたかのように思えるが、騙されてはいけない。これは杉山氏の策略である。
彼は英会話はおろか、日本語の会話すらマトモにできているか怪しい男である。

会食時に話したことといえば、中国人が多かったので、唯一おれが中国文化の中で明るいブルース・リーについて話を振ったが、さして盛り上がることはなかったことを覚えている。
ブルース・リーの映画の中国語は広東語らしく、現在一般的に話される中国語とは結構違うらしかったので、おれが一生懸命ちょんごぉくぅとか言っても通じなかった。
タケヒロに教わった「ちょんごおれん(中国人)」は通じた。

また、おれの名前の漢字は、「観察する、ただじっと見る」という意味があることも教えてもらった。
お母さんの言っていた名前の由来とは違うが、実際のおれの性分に合致しているので面白い。



明日はこのツアーのメインである、氷河湖と氷の洞窟へ。