尾ひれ100%ブログ

服に7つのシミを持つ男プレゼンツ

iPhone7を買った男

昨日、iPhone7を買った。

長年の間、何と戦っているのかもわからず、熱にうなされるようにムキになってiPhone4Sを使い続けてきた私であったが、ついに世界最先端の科学技術をその手中におさめる時が来た。

ほとんどのアプリは対応しておらず、常時3Gのナメクジ回線で、良いところなどおよそないように思えるiPhone4Sを使い続けてきたのには理由がある。

無常に過ぎ行く時代の流れに対する反逆である。

私の小さな傷だらけのiPhone4Sは、「おれはまだここにいたい!」そういう思いの表れであった。

否、まだ壊れてもいないのに機種変更することがすこぶる面倒臭かっただけであった。

実際、ケータイショップで過ごす時間は、往々にしてこの世で最も不毛な時間となる。

そこにあるのは、より多くのお金を使わせようとする人間と、より少ないお金を使おうとする人間同士の、不毛な駆け引きだけである。

我々顧客側は、「真実の価格」を隠蔽するために店員が構築した、複雑怪奇なクソまどろっこしい説明という名のメイズを頭を捻って紐解かねばならない。

私はこれが最悪に嫌いである。

思えばビジネス全般がそうである。

東宝インターンに応募しようとした時企業研究をするうちに、この会社は三流の映像作品をプロモーションによってヒットさせるのが上手なだけの会社であるということに気づいてから、ESを書くのに嫌気がさした。

もう嘘はうんざりである。

そうして私は出家の道を選んだのであった。


矢吹丈「半世紀」〈カドヤマ文庫〉(2035年)より