親の痛み子知らず
親知らずを抜きました。
このあいだ、力いっぱい歯磨きしすぎて歯茎が痛み、通院する羽目になりました。
その際に、親知らずも抜こうということになっていました。
この親知らず、真っ当に生え損ねることこの上なく、生え主の性格のひん曲がり度合いを写したようなひん曲がりぶりで、どの歯医者に見せても抜いた方がいいと言われること請け合いの問題児であった。
一年半前にも、歯科検診に行った折にこの問題児を発見され、抜歯の紹介状をしたためていただくに至った。
しかし、歯科検診に行くことで真人間パワーを使い切った私は、もう一度歯医者に行くための活力を残していなかった。
そのため、紹介状は開封されることなくクシャクシャとなり、引越しのドタバタに紛れて消え失せたと見える。
そこでようやく、はからずも抜歯のお誘いを受け、言われるがままにOKしたというわけだ。
その歯医者は、Googleのレビューで高評価を獲得しているだけあり、ホスピタリティに溢れていた。
受付のおばさんは美人で優しいし、院内も清潔そのもので、スタッフ全員が懇切丁寧な応対を徹底しており、こちらもちゃんとしようという気持ちになるほどだ。
先生の説明も毎度非常に明確で紳士的だったので、この男にならこの親知らずも任せられるのではないかと思った。
きっと痛くないように抜いてくれるはずだと。
抜歯の前日に、親知らずを12個に粉砕された人のブログを読み、激しく戦慄していたが、結果として5砕きで済んだ。
施術中は特に痛みも感じず、自分の口の中で人体を弄っているとは思えない壮絶な破壊音を聞くのみで、30分程度で終わったかと思う。
やはりあの先生の腕が良かったのか。
あとで聞いたが、抜歯といってもよくイメージされるようにペンチのようなモノで引っこ抜くのではなく、歯の付け根をドライバーのような器具でほじくり回して発掘するのが方法だそうだ。
作業台に置かれた血塗れのドライバーを見て、あとで聞いてよかったと思った。
粉砕された歯は記念に持ち帰らせてもらった。
しかし、家に帰って開封すると、エグい虫歯となっており、触った指が壊死するほどに強烈な臭いを放っていたのですぐに捨てた。
あまりにも臭かった。
おれはこんな臭いものを口の中に入れて生活していたのかと思うと、さすがにこれまで会った人々全員に謝りたくなった。